タイ料理 タイランドショップ/ 東京都錦糸町
ついにスーが勝った。
いきなり何のことかとお思いだろうが、実は彼女、今年大勝負に出ていたのである。石橋をたたいて渡る性格ゆえ、アクションを起こす前は念入りに検討していた。にもかかわらず、事は思うように運ばれない。スー自身には何の落ち度もないのに、様々な要因から想定外のことが重ねて起こり、まさに一人で荒波の中を泳いでいるような状態だった。そこに追い打ちをかけたのが「コロナ」という最大級の大波である。ちゃんと手足を動かし続けているのに岸にたどり着けない。どこに流されているのかも分からない。そんな不安しかない数ヶ月間だったろう。
しかし元来真面目で努力家の彼女を、神はちゃんと見ていてくれたらしい。最終的には「これがベスト」というべき島に出逢わせてくれた。ここは念押ししておきたいが、神は「連れて行ってくれた」わけではない。島が見えたところで、彼女が自分の力で泳いでいったのだ。そしてついにその地を踏んだ。
おめでとう、スー。
そんなわけだから、祝会をあげたくなった。世の中はまだまだコロナ大渦の中にあり、世界飯会も半年間お休みしている。しかし飲食店の皆様はそんなことも言っていられないわけで、我々だって本当は美味しいものを食べて応援したい。そこで東京都が出している「感染防止徹底宣言ステッカー」が貼られたお店を選んで出かけることにした。
今回はいつも以上に異国感を満喫したいので、錦糸町の「タイランドショップ」を選んだ。料理だけでなく現地の雰囲気まで丸ごと味わうなら打ってつけのお店だ。用意されたスプレーでお互いの手を消毒してから席につく。お客が帰ったばかりの別のテーブルを、スタッフが2種類のスプレーを使って丁寧に清掃していた。ありがとう、安心してお腹一杯食べられます。

さて、このタイランドショップ。料理がとても美味しいこと以外に2つの大きな特徴がある。1つ目は「頭ひとつ出た異国感」。店内は食事ができるテーブルエリアと、アジア食材販売エリアがある。食材販売店の中で食事もできるというイメージで、日本でいうところのおでんやもんじゃ焼きが食べれる駄菓子屋と似ている。そして客層が、日本人以上にタイ・ベトナム系の人が多い。よって聞こえてくる会話はほとんど日本語ではない。BGMがこの状態で現地そのものの料理を味わえば、意識はあっという間に錦糸町からバンコクへ飛んでいく。
2つ目は「コスパの良さ」。本当に錦糸町だろうか?と首を傾げてしまう価格設定ばかりだ。ちなみにこの日、女2人で9品注文し(飲み物含む)、5000円台におさまった。信じられない。
半年ぶりの宴に2人の興奮は最高潮となり、メニューを持つ手が震えた。あーだこーだと真剣討論の結果選ばれた精鋭たちが、次々とテーブルに運ばれてくる。
ネーム

ちょっと酸味のある生ハムソーセージ。見よ、ゴロリと入った立派なトウガラシを。さすが精鋭部隊の鉄砲玉。発酵した乳酸的な味わいで、これが大変に美味い。中の半透明な部分はゼラチンだろうか?これも食感含め、大変に美味い。ニンニク風味のソーセージとともに付けあわせのピーナッツ、パクチー、ネギを、一緒に口へ放り込む。見事としか言えぬ素晴らしい味のマリアージュ、大変に美味い。
パックブンファイデーン

空心菜の炒め物は中華料理でもよく見かけるが、タイではタオチオという味噌のような調味料を使うそうだ。空心菜の醍醐味であるシャキシャキ感がしっかり残っていて、歯ごたえエンターテイメントに心が踊る。タオチオ内に含まれた塩大豆(納豆みたい)が時々出現するが、これが味のアクセントになって実に良い。
プラードックパットペット

ナマズをタイのハーブ&レッドカレーで炒めたスパイシーな一品。私は初ナマズだったが、タイではポピュラーな魚だそうだ。ナマズは一度揚げた後、調味料と炒めてあった。淡白な白身魚だが独特のぬめりがあり、なんだか里芋に似ている。生臭さなどは全くなく、結構辛いけど箸がどんどん進んでしまう。時々顔をだすレモングラスの爽やかな風味が嬉しい。ナマズは骨が結構鋭くしっかりしているので、食べるときはそこだけご用心。
ヤムクン

タイの代表的なサラダといえば「ヤムウンセン」があるが、「ウンセン」は春雨、「クン」はエビのこと。つまり、あの味わいのエビメインサラダ。これが涙がでるほど辛い! 唐辛子はさることながら、生のタマネギ。これがバシバシに攻めてくる。食べながら何故かドロンジョ様が頭に浮かんだ。間違いなくバツグンに体に良いサラダ。血液が体内を走り回る感じがした。
上記4つは、すべて辛い料理だった。よく冷えた甘いタマリンドジュースが何度も私の舌を癒してくれたことよ。

最後に麺2種で仕上げに入る。これらは全く辛くなく、ただひたすらに美味かった。
バミーヨック

麺が珍しい緑色。茶そばではない、中華麺だ。汁ありと汁なしが選べるが、今回は汁ありを。このスープが美味いのなんの!トッピングのムーデン(タイ風焼き豚)とともに口へ流し込めば、唸るように「うんまいなあ~!」の一言が漏れる。ルクチンプラー(魚団子)はカマボコとハンペンの中間のような味わいで、これもスープと大変よく合う。
パットシーユー

シーユーとはタイ醤油のことらしい。きしめんのような平たい極太麺を、たっぷりの野菜と一緒にシーユーで炒める。ドカッと上に盛られたコショーのビジュアルが実に良い! なぜだか分からないけれど後味に大豆のような、きな粉のような、そういった風味を感じた。そういう味の麺料理を他で食べたことがないので、めでたく「初めまして味」となった。ラッキー!
こうして度を越した満足感とともに、腹をさすりながら店を後にした。スーに何か一番美味しかったか聞いたら、「すべての料理の出汁が美味しかった」と予想外の答えが返ってきた。でも分かる。アジアの出汁って、どうしてあんなに美味しいんだろうね。
コロナは大変だけど学んだことも多い。今一番思うのは、好きなときに自由に行きたい場所へ行ったり、制限なく食べられることの幸せだ。私たちの日常はそれだけでとても贅沢なことなんだと、今更ながらに思う。
あらためて。おめでとう、スー。
お店について

- 店名
- タイランドショップ
- 住所
- 東京都墨田区錦糸3丁目7−5
- アクセス
- JR総武線錦糸町駅 北口から徒歩3分
- 東京メトロ半蔵門線錦糸町駅 3・4番出口から徒歩3分
- 営業時間
- 13:00~22:30
- 定休日
- 月曜日
- TEL
- 03-3625-7215
タイ王国について

日本の沖縄よりさらに南西にあり、南北に長い国です。国土面積は日本の約1.4倍、首都はバンコクです。

国旗は赤が国民を、白は白像と宗教(仏教)を、青は国王・王室(チャクリ王朝)を表しています。
(株)学研研究社「世界の国旗ビジュアル大辞典」より引用