日本で食べた世界飯

日本にいながら世界旅行!現地に行った気分でペロリと美味しくいただきます

メキシコ料理 アステカス / 横浜市関内

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スーと世界飯活動を共にするようになってから早くも2年が過ぎた。どんな食材にも物怖じせず、しかも量が食べられる相棒はまこと頼もしく、毎回私の欲求は大きく満たされるようになった。スーもまたずいぶん変わった。詳しくは以前の記事を読んでいただきたいが、当初は過去に会ったことがないほど「ミニマムゴーアウト」な人間だった。千葉県に生まれていながら、そして首都圏に長年勤めていながら、東京近郊の主要な街にほとんど出かけたことが無かったのである。勤め先の近くにアパートを借り、休みの日は自転車で動ける範囲に楽しみを見つけ(確かに首都圏はどこに住んでもそれで事足りてしまうことが多いけれど)、ずっとそうして過ごしてきたらしい。地方の田舎育ちの私から見れば千葉、埼玉、神奈川は東京とセットで、電車に乗れば星の数ほど存在する楽しい町に簡単に移動できる夢のような場所なのに、こんな人もいるのかと言葉を失った日がなつかしい。世界飯活動を遂行するにあたり、彼女は世界の食事だけでなく日本の魅力的な町をも体験することになった。それにだんだん慣れてきて、今では1人で新宿にも赤坂にも出かけてゆく。ついにこないだなど、北陸新幹線に乗って金沢まで行った。なんのことはない、好奇心が無いのではなく、火がつきにくいだけのことだったのである。ひとたび着火すれば人並み以上に動き回る、ねずみ花火のような人間だった。

今回の場所は横浜。待ち合わせは元町中華街駅にした。せっかく遠出したのだから、中華街観光をしようと誘ったのである。「ランチを中華街で食べ、たっぷり歩いてお腹をすかせてからのディナー」を提案したが、朝はゆっくりしたいとやんわり断られた。仕方がないので15時スタートとなる。

「横浜、初めてです」

おお…、マジか。久々に来たな。横浜もまた魅力にキリがない街だが、初めてなら中華街は良いセレクトだと思う。駅から地上にあがって間もなく、彼女の目が輝き始めた。そうだよね、この街は気持ちが上がるよね。カラフルな看板、お店から漂う美味しそうな匂い、呼び込みの声、雑貨店の魅力的な商品棚。心浮き立つ物が洪水のように、五感を通して飛びこんでくる。そしてここで、彼女のある趣味を知ることになった。

「占い、好きなんです」

横浜中華街には占い屋もたくさんある。占い師は中国人、日本人、いろいろだろうけれど、慎重な彼女はやみくもに飛び込んだりはしない。どこのお店が評判が良いか、あらかじめ調べて足を運ぶ派だ。そうと知っていれば伝えておいたのだが、この日は時間があまりない。泣く泣く諦めたのだった。

そういうわけでフラリ程度に中華街を散歩した後、お目当ての店に向かった。ゆっくり歩いて20分、関内駅近くの「メキシコ料理 アステカス」に入る。この場所、以前紹介した「ベトナム料理レーロイ」とも大変近い。アジアフードが大好きなスーをぜひそっちにも連れていきたいが、悲しいかなお店の定休日と彼女の休みが被っている。いつか機会があれば…。
お祭り屋台でタコスくらいは食べたことがあるが、それ以外は初めてだ。陽気で情熱な世界に合わせてビールでも飲めればよいが、残念ながら我々は二人とも下戸だ。お酒と合わせるタイプの料理は若干気が引ける。

ナチョス

ナチョス

「バリバリ酒のつまみやないかーい!」とツッコミが聞こえてきそうだが、この会は「その国らしい尖ったものを選ぶ」のが趣旨だ。トルティーヤを使っているものは選ばねばならぬ。
ちょっと解説を入れる。メキシコ料理は基本「トルティーヤ」というトウモロコシの粉や小麦粉をうすくのばして作った、薄いパンのようなものを使う。それを揚げたり、焼いたり、煮たりして、様々な料理を作っていく。ナチョスはその代表格であり、そしてスポーツ観戦やカラオケ会が日常に存在しない我々にとっては大変めずらしい食べ物なのである。
たっぷりのとろけるチーズの下には、ほんのり甘い黒豆のペーストが敷いてあった。上にはハラペーニョの酢漬けとみじん切りされたタマネギ。これらが加わることで、スナックが立派な食事になる。パリパリのトルティーヤは豆ペーストがかかるとしっとりした食感になる。くるりと巻きつけながらパクパク頬張った。お供がジンジャーエールでも十分美味しい。

サボテンサラダ

サボテンサラダ

「初食材」のお出ましである。伊豆のシャボテン公園でサボテンステーキを食べない限り、国内でこれにはなかなか出会えないだろう。日本の食材でサボテンに似ているものは無い。少なくとも私は知らない。強いて言うならばフキなどが近いように思うが、それは瑞々しい点だけで繊維のシャッキリ感はない。味は少し酸味があるけど水分が多いので、白菜とか大根とかの部類に属するように思う。日本の味付けに合いそうな気がするので、地方の郷土料理にこっそり出されても違和感がないかもしれない。

黒豆とオニオンのスープ

黒豆とオニオンのスープ

どうやら豆もまた、メキシコではよく使われる食材のようだ。ピリ辛のトマトスープに黒豆が加わることでコクと甘みが加わり、口当たりがまろやかになる。楽しいのが中に沈んでいるタマネギを噛むとき。奥歯でシャキシャキつぶすとスープが一味変わる。風味づけのパクチーは味に複雑さを加えてくれる。ビックリしたのが、とろけるチーズが入っていたことだった。チーズは美味しいけど、スープにまで入っているとは。現地でも同じなのだろうか?

ビーフタコ

ビーフタコ

ごらんのとおり「タコ」は「タコス」のことだ。ハラペーニョが加わった調味料で味付けされた牛肉に、生野菜とアボカドが合わせてある。屋台で食べるものより豪華だ。牛肉の味付けは意外に日本と似通ったところがあり、ハラペーニョでメキシコに連れていかれる。ホカホカのトルティーヤは香ばしく、中の具材と一緒に食べれば至福の極み。大口でたくましく頬張っている時、頭の中をジプシー・キングスのボラーレが大音量で流れた。

ブリトー(ビーフ)

ブリトー

…しまった。タコスと牛肉が被る痛恨のミス。ブリトーは他に「豚肉とパイナップル」「エビ」がある。次回は他の味にぜひチャレンジしたい。トルティーヤの中に食材を中にしっかり巻いてクレープ感覚で食べるらしいが、このお店ではソースの中に浸してあった。なにしろデカい。長さは20cmほどあり、中の具は牛肉と野菜、パクチー、そして米が入っていた。この米が長米種ではないのに程よくパラパラで、ソースと合わせて食べると実に美味しい。トルティーヤはとても柔らかく他の料理と違う気がしたが、あとで調べるとブリトーに使うのは小麦で作ったものらしい。一言にトルティーヤといっても、いろいろな種類と使い方がある。

いつになく限界に近い満腹を迎えた。チーズと炭水化物が胃を満たし「本気のお腹いっぱい」が内側からやってくる。「明日からまた頑張れます」とスーが言う。次は昼から遊びにきて占いもやろうよと話したが、この1週間後、スーはふたたび一人この地を訪れ、早々と中華も占いも消化したのであった。やはりねずみ花火だった。

お店について

店名
アステカス (AZTECAS)
住所
神奈川県横浜市中区常盤町4-52 文乃家ビル B1F
アクセス
JR根岸線関内駅 北口 徒歩4分(244m)
横浜市営地下鉄ブルーライン関内駅 4番出口 徒歩1分
みなとみらい線馬車道駅 7番出口 徒歩6分
営業時間
月~日曜日・祝日 17:00~24:00
定休日
無休
TEL
045-662-5866

メキシコ合衆国について

メキシコ地図

アメリカ合衆国の南、北アメリカ大陸の南部に位置します。西は太平洋、東はメシキコ湾とカリブ海に面しています。国土面積は日本の約5.2倍。首都はメキシコシティです。

メキシコ国旗

紋章は「ワシが蛇をくわえて湖沼のほとりのサボテンに止まっているのを見たら、そこに都を築け」というアステカ文明の伝説に由来しています。白はカトリック教会と宗教の純粋性を、緑は独立を、赤は国内の諸民族統一を表しています。

(株)学研研究社「世界の国旗ビジュアル大辞典」より引用